日本ではどういう訳か 英語圏のジェンダーの区別をしないようにする取り組みのみが 紹介されている。 日本語のように文法性の標示が義務的でない言語では、 そういう方向を紹介する必要があるが、 それだけではまずいと思う。
英語の例として、man が"男"と"人"の両方の 意味をもっていたのが問題視されたことの解消として、 "人"の意味で human の使用が広まった例をまず 確認しておこう。同じような時期から、 men の相対頻度が下がり、humankind の相対頻度が上っていく。
それに対して、文法性の標示が義務的な言語では、 文法性に対して中立な単語を使うのが難しいので、 両方の性を使うという方向になる。 スペイン語の profesora `女性の教師' の相対頻度も近年、 上っている。 グラフは定冠詞つきものである。 なお、1900年前の高まりの原因は不明である。
フランス語の大統領の女性形の相対頻度も作ってみたのだが、 これは少し意外だった。 アカデミーの規範である女性形の敬称に男性名詞の組合せが一時的に増えたもので、 現在よく使う敬称も名詞も女性のものの方が古くから使われていた と読み取れる。