2014年9月23日火曜日

母語話者の「語感」とコーパス

強意語 very と really の使い分けについての 学習者向け記事があった。 その中では very を客観的、 really を主観的としている。

この主張自体には、とやかく言う気はない。 母語話者がそう思うことは貴重なデータである。 ただし、それが現実を反映しているかは別であり、 確認する必要がある。

really と very で主観性に差があるとすれば、 形容詞によって、really と very のオッズ比が変わるはずである。 例によって手抜きで Google Books コーパスを 使って確認しよう。 hungry と busy では hungry の方が主観性が高いので、 really に偏るはずである。 下のグラフの青線と赤線は、 be 動詞現在形一人称 am の省略形 'm の後でのそれぞれ hungry と busy のオッズ比の 変化である。 これを見れば、確かに主観的な hungry の方が近年は高く出ている。

ところで、主観性が高いはずの hungry でも、 緑線のように am のままであれば、圧倒的に very に偏る。 これは何を意味しているのであろうか。 really と very の選択のかなり大きな部分が、口語であるか否かによると考えるのが無難であろう。

実は、同様の傾向が awfully について 1910年ごろにも見られる。

これらのグラフから考えるに、むしろ very と really のちがいは、 very が無標の強意語であるのに対して、 really が近年の口語で流行の強意語であることを示しているのではないだろうか。 まだ強意ができる形容詞が広まりつつある段階で、 強意されやすさが主観性に関係しているのではないかと思う。

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