N.Tsujimura先生講演会の感想。Google+の内容の実質的な再投稿。承前。
Tsujimura先生は動詞の新語「~る」の音韻テンプレートとして (C)V(C)V*r- (*はアクセント位置)というものを考えている。 最後の部分が r- ではなく、ru# なのではないのかが、前の投稿の話。今回は、前半の部分。
*ru# のようにアクセントの指定だけがあり、長さの制約がないのではないか。
僕自身の作例では、1拍でも可能である。 実際に採集できているものは、語幹部分が2拍以上であり、Tsujimura先生もビル・ゲイツに由来する「ビる」だけをあげる。 しかし、《仕事を進めずにギャーギャー騒いでばかりいる》の意味で「ギャる」を作れると思う。 短さに制限があるようにみえるのは、音韻の問題というより、 元の語が再現できないという機能的な問題なのではないだろうか。
さらにCVCV型のテンプレートというより、韻律的なものではないかと思う。それには母音の短縮が関係している。
アクセント位置の母音については、「コピー」から「コピる」になるように長母音の場合、短縮することが多い。 短縮しない場合は、音節を分けるとよくなる。ただし、実例は少ない。僕が拾えたものには人名に由来する「イトウる」がある。 アクセント位置以外の母音についても短縮しやすい。 「グーグル」から「ググる」が有名であるが、 「デニーズ」からの「デニーズる」「デニズる」「デニる」のようにいくつかの形が見つかるものもある。
アクセント位置の母音が短縮されるか、分割されるのは、 重い音節では左側の要素がアクセントを持ちやすいことが関係していると考えると説明できそうである。 OT的に言えば、 アクセント位置を変えてはいけないという制約や重い音節で左側にアクセントがあるという制約より 母音の長さを維持するという制約の序列が低ければよい。 そうすると、母音が短縮されるか、音節が分割される。
元の語が推定できるという制約の位置づけが難しいが、 重い音節がアクセントを持ちやすいという制約と組み合わせることで、 韻律的なテンプレートによって、前にある長母音が短縮されるということも説明ができるようになる。 前に長母音があると重い音節なので、アクセントがないと制約に違反する。 長母音維持の制約の序列が低ければ、短縮した方がよくなる。
そこでCVCV型というより韻律テンプレートの方がいいのではないかと思う。
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