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2018年9月21日金曜日

メモ:英語の -one の発音

7タイプあるようである。iOS版の物書堂 G5 で検索。

  1. /-oun/
    これが本則: bone, tone, stone, zone, etc.
  2. /-ʌn/
    one, done, および、それらを含むもの: one, anyone, etc.; done, undone, etc.
  3. /-ɔːn/
    gone, および、それを含むもの: gone, begone, etc.
  4. /-ouni/
    canzone, cicerone などの借用語。イタリア語など。
  5. /-əni/
    anemone などの借用語。ギリシア語。
  6. /-ounə/
    krone のみ。ドイツ語?
  7. /-u:n/
    Scone のみ。ゲール語?

2, 3 はいわゆる sight words を覚えればいい。 4以下の借用語については、他の -oCe で、いつか調べる。

2016年6月19日日曜日

-ar と -al の異形態を英語の音韻論で面倒みるの?

英語にはラテン語に由来する形容詞派生の接辞 -al がある。 これには/l/音の後で使われる -ar という異形態がある。 この使い分けは英語の音韻論で扱われるべきなんだろうか。 僕は無理だと考えるが、 そうしている論文がある。

  • Tanaka, Shin-ichi. 2007. On the nature and typology of dissimilation. English Linguistics 24(1) 279-313.

これの 3.2.1 がそうで、/r/と/l/についての間の距離を入れたOCPと忠実性で説明している。 語例が納得できなかったので、凝った検索をするために iOS版の『小学館ランダムハウス英和大辞典』(2nd edn.)をポチっとなしてしまった。 これの -al の項には、次のようにある。僕もこちらの方に賛成である。

もとは -l を含む語幹にはつかなかったが、 最近ついた形も用いられ、意味の区別をする: familiar とl familial.

田中先生は、fa(míli-ar) fa(míli)-al と分析することで、音韻論の中で処理しようとする。 前者だとわたり音の[j]で実現できるが、後者はできないと主張しているが、 OEDのアメリカ発音は両者とも[j]になっている。 また、peculiar はわたり音で記載されているが、conciliarは母音である。 ということはよく使われるか否かによると考えるのが自然である。

-ar と -al の両方があるものを上の辞書から探してみると、 laminar/laminal, linear/lineal, molar/molal, valvar/valval, vulvar/vulvalがある。 この中で韻律が変えられそうなのは linearだけだが、手持ちの辞書にはわたり音がない。 さらに molal, valval, vulval は最適でないはずの形である。 なお、linear/linealは古典ラテン語で両方があるのが確かめられる。

familiar, peculiar を処理するために 2つの/l/の間にフットがあるばあいの制約も付けているが、 そうすると -l-ical の形もひっかけてしまう。

語種ごとに順位がちがう可能性もあるが、/l/のOCPに違反するような語は、 lall, loll, lulll もある。 Urban Dictionary ならさらに blol, clol, plol などもある。

ということで、ラテン語の規則はラテン語にまかせた方がいい。 -ar と -al で意味のちがいがでるのは、 古くからある語に追加して -al の形が作られたからで、valvar/valval, vulvar/vulval は単なる変異のようである。

2016年6月13日月曜日

日本諸方言における前鼻音のOTによる一解釈

日本語の古語にあったとされる前鼻音が弁別を強化 enhance するため、 つまり素性を追加することで弁別しやすくするためであったと考えてみようという試みである。 OT(最適性理論)を使っている。 元ネタは、次のもの(直接の参照はKindle版):

  • Flemming, Edward. 2005. Speach Perception and Phonological Contrast. In Pisoni, David, & Remez, Robert (eds.). The Handbook of Speech Perception. Blackwell Handbooks in Linguistics. Malden, MA: Blackwell.

ただし、Flemmingがよくないとしている方法を強引を使っている。 アイディアは単純なのだけど、テクニカル。

使う制約はFlemmingのものだが、PrenasalizedはFlemmingが妥当ではないとしているもの:

*VTV
母音の間では無声阻害音はよくない。
Prenasalized
有声阻害音なら前母音鼻音化するもの。
Ident(Nasal)
鼻音性は基底と表層でできれば同じ。
Ident(Voice)
有声性は基底と表層でできれば同じ。

まずは、東北の /mato/ = [mado], /mado/ = [maⁿdo] を作ってみる。 ここでのミソは、同順位の制約の違反は足し算にならないこと。

(1)a. 東北方言、基底は無声
/mato/*VTVIdent(Voice), PrenasalizedIdent(Nasal)
 mato*!
⇒mado *, *
 maⁿdo *, *!
(1)b. 東北方言、基底は有声
/mado/*VTVIdent(Voice), PrenasalizedIdent(Nasal)
 mato*!
 mado ,*!
⇒maⁿdo , *

これの前にあったはずの古代日本語のばあい。ただし、*VTVの位置はIdent(Voice)以下ならどこでもいい。

(2)a. 古代日本語、基底は無声
/mato/Ident(Voice), *VTVPrenasalizedIdent(Nasal)
⇒mato ,*
 mado*, *!
 maⁿdo*, *!
(2)b. 古代日本語、基底は有声
/mado/ Ident(Voice), *VTVPrenasalizedIdent(Nasal)
 mato ,*!
 mado *!
⇒maⁿdo *

PrenasalizedとIdent(Nasal)が同順位ならゆれている状態。Ident(Nasal)>>Prenasalizedなら現代の前母音がない状態。

2015年6月17日水曜日

副詞接尾辞 -ly でのアクセント移動

英語で形容詞を副詞にする接尾辞 -ly は、 ふつう付加されてもアクセント位置を変えない。 例えば、compArative に対して、 compAratively のようにである。

しかし、-ary, -ory で終る形容詞に付くばあいには、 アクセントが -Arily, -Orily のように移ることがある。 例えば、prImary に対して、primArily のようにである。 これはアメリカの発音のようである。

これは Ordinary から ordinArily のようにアクセント位置が離れている ときの起こりやすい。 このようなばあいでは、-ary, -ory の母音が ə になっていない。 一方、 provIsory, satisfActory, exEmplary のようにアクセント位置が近いと 起こりにくいようだ。 このようなばあいでは、-ary, -ory の母音が ə になっている。

ただし、elemEntary から elementArily のように -mentary のときには、 起きている。

2013年6月25日火曜日

女性名のアクセント

新明解のアクセント辞典に載っている範囲では、 次のようになっている。

  • 2拍以下が頭高型
  • 「〜よ」「〜え」が平板型
  • 「〜こ」「〜か」が 3拍が頭高型、4拍以上が前部の最後にアクセント
  • 外国人名は、外来語アクセント
  • カタカナ・ひらがなで用いられるようなものは、平板型

最後の規則の意味がよく分からないのだが、 「〜み」の「ひろみ」「なおみ」「ますみ」が例に出されている。

女性名で多そうなものだと「〜な」〜の」がある。 前部が 2拍で「ゆりな」が頭高、「ゆりの」が平板だと思う。 前部に意味がない「さりな」「さりの」だと両方、頭高のような気がする。

どういう規則なのか、全然分からない。

2013年6月24日月曜日

アクセントがない語

日本語以外を専門とするものとして、 アクセントのない語というのが、不思議なのである。

その単語自体にアクセントがなく、 近接する語と同じアクセントのグループに入る clitic 接語がある言語は多い。 ところが、日本語のアクセントのない語 (金田一語類の名詞 1類) は、 そうではなく、自立語である。

多くの方言では、 アクセントと声調についてのいろいろな規則があるので、 それを破らないためには、 〈アクセントがある〉という規則を破ればいいという 最適性理論的に考えたい。 ところが、1類には単純語と考えたい語が多いので、なやましい。

2013年6月21日金曜日

2拍+1拍と中高型の忌避

複合語とアクセント、連濁の関係で、ずっと悩んでいるわけである。

後半 1拍でわりときれいにアクセントが決まるものとして、 人名の「〜子」がある。 前半が 1拍「リ子」HL、2拍「サト子」HLL、 3拍「サクラ子」LHHL のようになる。 4拍以上の実例は知らないがふざけて作るようなものでは、 LHH...HL になる。

ここで問題なのは、2拍+1拍(合計 3拍)のときのみ、 アクセント位置が1つ目にずれていることである。 これは東京アクセントにおいて、 金田一語類3拍名詞 3類、5類のLHL がHLL に移行していることと 関係があると思う。

なお、人名以外の場合、「〜子」で連濁するものがある。 人名の「ミドリコ」も"嬰児"「ミドリゴ」も LHHL で アクセントは同じだ。 前半2拍では「タマゴ」が中高 LHL か平板、 「フタゴ」や「ダンゴ」が平板になっている。 ただし、 「ウジコ」や「ウリコ」も平板である。

2013年6月20日木曜日

漢語3拍「□語」のアクセント

「(漢字1字2拍)語」という形の単語を『逆引き広辞苑』で集め、 新明解のアクセント辞典と国語辞典でアクセントを調べてみた。

アクセントの分かる64語中、 頭高のみが7語 (「言語(げんご)」「豪語」「言語(ごんご)」「人語」「壮語」「面語」「妄語」)、 頭高と平板が 5語 (「閑語」「結語」「隻語」「発語(はつご)」「密語」)、 頭高と中高が 1語 (「激語」) だった。

「言語(げんご)「言語(ごんご)」「人語」「隻語」の 4語を除くと、 サ変動詞になるものばかりである。

しかし「造語」のようにサ変で使えるものでも平板がある。

いくつか仮説が考えられるが、 「語」の部分の意味が単語や言語のときは平板になり、 意味が語る行為のときには頭高なのかもしれない。 とはいえ全部は説明できそうにない。

2013年6月19日水曜日

「~~語」のアクセント

「〜〜語」という単語のアクセントが気になりだした。 手元の新明解のアクセント辞典と国語辞典では、 「語」自体は /go*/ なのだが、 「〜〜」の部分が1拍だと頭高型 (「華語」/ka*go/) 長い場合は平板型(「中国語」/cu:gokugo/、 ただし「中国」/cu*:goku/) のようである。

問題なのは、「〜〜」が2拍のときで、 頭高型の「言語」/ge*Ngo/ と平板型の「原語」/geNgo/ がある。 アクセント辞典では、名詞で頭高(「正史」/se*:si/) で、 動詞で平板(「制止」/se:si/)が多いとあるが、それとも違うようである。 「口語」は平板で、「豪語」は頭高だ。

「フラ語」「スペ語」のような新語は平板のようだ。

2013年6月18日火曜日

発音が同じ en- と in-

英語の前置詞の in の語源である √en は、 接頭辞として英語の in-、仏語の en-、ラテン語の in-、ギリシア語の en- になるはずである。 しかし、このうち英語、仏語、ラテン語のものの発音が /in/ なので、 英語とフランス語のものが混同されやすい。 実際、『リーダース+プラス』(EPWING CD-ROM版, 研究社, 1996)には 次のようにある。

★en- と in- は交換できる場合があるが, 《米》 は in-, 《英》 は en- を用いることが多い.

例によって、Google で検索。 フランス語では enflammer の inflame、 entraîner (意味は違う)の entrain だと次のようになる。

to inflameto enflameto intrainto entrain
site:edu約 11,500 件約 1,310 件約 14 件約 8,430 件
site:ac.uk約 4,410 件約 309 件---約 1,980 件

フランス語がない inarm と enshrine だと次のようになる。

to inarmto enarmto inshrineto enshrine
site:edu約 52 件1 件約 46 件約 7,370 件
site:ac.uk------2 件約 5,600 件

この範囲では辞書の記載形が強いとしか言いようがない。

2013年6月17日月曜日

フランス語風ラテン語彙

英語の語彙で数が多いのが、 フランス語風ラテン語彙とでも呼ぶべきものである。 綴りをみると、ほとんどの部分がラテン語なのであるが、 語末の部分だけが、フランス語の形 (ただし、現代フランス語とは異なることがある) になっている。 例えば、"性質" は、 ラテン語で主格が qualitas, 対格が qualitatem であるが、 現代フランス語で qualité, 英語で quality になっている。

これは英語がラテン語から借用するときに、 フランス語のラテン語からの借用規則も借用してしまったことによる。

語末の部分だけフランス語なので、 派生を繰り返すとラテン語のような形に戻しておかないといけない。 例えば、-ity〜-itat-、-ize〜-izat- のようにである。 そこで、quantity → quantitative → quantitativize → quantitativization のように派生されていく。

これだけでもややこしいのに、フランス語風でないラテン語彙がある。 例えば、sanatorium "療養所" のようなものである。 -torium はフランス語風の -tory に対応する。 例えば、 lavatory "便所" のようなものである。

しかも、フランス語風の -ity や非フランス語風の -ium は 古典語アクセント規則(大体は後ろから 3つ目)なのに、 -tory は違う可能性があるというのがさらに面倒。 diréctory だけど、lávatòry 。

2013年6月12日水曜日

Shibbolethism

Shibbolethism がOED に載っていないのが、意外だった。 もちろん shibboleth "他の集団が発音できない語" は載っている。 英語版のWikipedia には Shibbolethの説明と、 一覧がある。

語源は、『旧約聖書』「士師記(ししき)」12.06 に由来する。(引用は新共同訳)

12:05ギレアドはまた、エフライムへのヨルダンの渡し場を手中に収めた。エフライムを逃げ出した者が、「渡らせてほしい」と言って来ると、ギレアド人は、「あなたはエフライム人か」と尋ね、「そうではない」と答えると、 12:06「ではシイボレトと言ってみよ」と言い、その人が正しく発音できず、「シボレト」と言うと、直ちに捕らえ、そのヨルダンの渡し場で亡き者にした。そのときエフライム人四万二千人が倒された。 12:07エフタは六年間、士師としてイスラエルを裁いた。ギレアドの人エフタは死んで、自分の町ギレアドに葬られた。

2013年6月9日日曜日

「▽っ△り」「▽ん△り」の生産性

オノマトペの副詞「▽△り」には 強調形の「▽っ△り」「▽ん△り」がある。 どちらになるかは、△のところの子音による。

△の子音が、阻害無声音であるときには、促音が入る。 「にこり」から「にっこり」、「にたり」から「にったり」、 「にぱり」から「にっぱり」、 「ぱさり」から「ぱっさり」、「ぽちゃり」から「ぽっちゃり」 のようにである。

△の子音が、r 以外の鳴音のときには、促音が入る。 「やわり」から「やんわり」、「ひやり」から「ひんやり」、 「にまり」から「にんまり」、「しなり」から「しんなり」 のようにである。

僕個人で遊んでみた場合、この2つの場合は生産性がある。

△の子音が、阻害有声音のときには、促音の例が拾える。 「ざぶり」から「ざんぶり」、「あぐり」から「あんぐり」のようにである。 「うんざり」も「*うざり」からのはずであるが、 「*うざり」の実例は『日国』精選版にない。

△の子音が r のときには、辞書に記載がないようである。 しかし、両形が拾える。 検索は適当なので、オノマトペ以外も含むが、 Google では「ゆるり」(約 5,910,000件)であるが、 「ゆんるり」(約 7,670 件)に対して「ゆっるり」(約 2,660 件)ある。 「ぐるり」(約 2,770,000 件)では、傾向が逆で、 「ぐんるり」(約 439 件)に対して「ぐっるり」(約 808 件)ある。 「ぱらり」(約 381,000 件)だと、 「ぱんらり」(約 15,000 件)に対して「ぱっらり」(約 3,640 件)、 「ぷりり」(約 45,600 件)だと 「ぶんりり」(約 76 件)、「ぷっりり」(約 277 件)のように傾向は 一定しないが両形が可能のようである。

僕個人の内省としては、一時語の場合、 △が r と阻害有声音では、 促音より撥音の方がましのことが多く、 特殊拍を入れない方がいい感じがする。 「ぱるり」>>「ぱんるり」>「ぱっるり」、 「ぱぶり」>>「ぱんぶり」>「ぱっぶり」のような感じだ。 あえて強調するなら「ぱるっり」「ぱぶっり」の形の方がまだ、いい感じがする。 代用できる自然な形は「ぱるっと」「ばぶっと」だと思う。

2013年6月7日金曜日

-ic と -ique

フランス語やその祖語にあたるラテン語から 同じ要素を数度にわたって英語が借用していることがある。

-ic も -ique もラテン語の (場合によっては対応するギリシア語からラテン語が借用した) -icum (対格, 主格は -icus) に由来する。

-ic は中世以降の書きことばとしてのラテン語からの借用である。 アクセントはこの前の母音にある。 例えば、Hellénic "ギリシア的な" である。 ラテン語のアクセント位置が保たれていて、 いわゆる古典語アクセント規則には従わない。

一方、 -ique はフランス語がラテン語から借用したものをさらに借用したものである。 例えば、uníque である。 比較的最近の借用で、アクセントはフランス語のアクセント位置が保たれ、 i にある。 大母音推移のあとの借用なので、 〈i〉であるにもかかわらず、/aI/ ではなく、/i:/ であることも注意したい。

ところが、これらは、 名詞化すると Hellenícity, unícity のように同じふるまいをする。

実は、mariage などの語尾 -age も -ic や -ique と関係があり、 -áticum に由来する。 これは古フランス語から中英語の段階で借用している。 古い語尾なので、アクセント位置は前半要素に移動している。 ただし、garage のように /Á:3/ で終る新しい借用語はフランス語の アクセント位置である語末にある。

古フランス語に由来する語、 古典語に由来する語、 近代フランス語に由来する語で同じような要素が借用されていて、 アクセントの規則が別々というのが、本当に面倒だと思う。

2013年6月6日木曜日

山羊田くんと豚田さん

連濁の話である。 「山羊田くんはヤギタかヤギダか」 で、 「○△田」のような名字が前半要素に濁音がある場合でも 連濁することがあることを述べた。

前回のは文脈を入れると△が濁音でも「田」が濁りうるという話だった。 ○のところが濁音の場合は例が少ないのであるが、 筆名や仮名では例が拾える。 この場合に特別な文脈がなくても連濁する「豚田」/butada/ がある。

前半が 1拍のものでは、アクセントが平板型で連濁するようである。 例えば、「馬田」で /bada/ のように。

こういうのまで含めてなんとか説明でくるとうれしいのであるが、 いいアイディアが思いつかない。

2013年6月5日水曜日

派生語尾 -ty によるアクセント位置

英語の語形成とアクセント位置がややこしい。 一例を眠れぬ夜に読み始めると徹夜すること間違いなしの 『プログレッシブ英語逆引き辞典』(國廣哲彌, 堀内克明 (編)、小学館, 1999年) を引こう。 -ty "……な性質" の項 (p.1213) から。

第1強制は, (1)直前の母音字が付く場合は 2つ前の音節に, (2) 直前に子音字が付く場合には語頭にある. 例外: entirety.

この説明は不正確である。 実は、-ity の項 (p.683) の「直前の音節に第 1 強勢」 とセットで考えないといけない。

ややこしいのは、(A) 古典語アクセント規則によるものと、 (B) 本来語・フランス語借用語アクセント規則によるものがあるからだ。

(A) 古典語アクセント規則に従うもののアクセント位置は、 ここでは後ろから 3番目と考えておけばいい。 派生語尾を含めて 3番目にくる。

この規則に従うものは -ity が基本形である。 実際、able に対して、ラテン語っぽくして abil- にしてから abílity になる。 ところが、 語基の最後が i の場合に異化 (dissimilation) -ety に変わる。 そこで、anxi-ous に対して anxíety になる。 引用の(1)における「直前の母音字」は、〈e〉に限られるのは、このためだ。

(B) 本来語・フランス語借用語アクセント規則に従うもののアクセント位置は、 原則として接頭辞を除く語頭だが、動詞や一部の形容詞では重い音節にある。 この場合、-ity の -i にあたる母音はフランス語では消えているので、 「直前に子音字」になることがほとんどだ。 これが (2) の場合のことである。 こちらは、派生語尾によって強勢位置が移動しない。 そこで、 前の部分が形容詞として実際にあるものは、形容詞の強勢位置が名詞の強勢位置になる。 したがって、lóyal に対して lóyalty、 entíre に対して entírety になる。

接頭辞は通常、アクセントをもたないので、entirety 以外にも語頭に アクセントがないものがある。 例えば、dislóyal からの dislóyalty、 unsúre からの unsúrety などである。

2013年6月2日日曜日

山羊田くんはヤギタかヤギダか

連濁をしないこと説明するために ライマンの法則が使われる。 ここで問題にしたいのは、前半に濁音がある場合である。 Wikipedia から引用しよう:

また、かつては前部要素のもつ濁音も連濁を阻止していたと言われており、 「ながしま(長島)」と「なかじま(中島)」などにその痕跡を見ることができる。

問題は、2つある。「○△田」のような名字について:

  1. 聞いたことがない名字でも△が濁音であれば、最後が/タ/になるので、 痕跡ではなく規則が生きていないと困る。
  2. その一方、百科事典的な知識を与えると最後が/ダ/でも可能になる。

例えば「鍵田」という名字がある(「鍵」は /カギ*/)。 この名字について知らない人に発音してもらうと /カ*ギタ/になる。 しかし、次のような背景説明をすると /カギダ/ が出てくる。

ほら、あそこに L 型の田圃があるでしょ。 昔の鍵の形で、この人の先祖はあの田圃のところに住んでたので、 こういう名字になったんだって。

同様のことは、今のところ実例が拾えていない「山羊田」でも なりたつ(/ヤ*ギ/)。 仮名として使われている場合は /ヤ*ギタ/ であるが、 《どうみても動物のヤギなのにクラスメートというギャグ漫画に出てくる人物》と すると/ヤギダ/が許される。

このことは、聞いたことがないような名字を使っても同様になる。 「海田」は複数の読みがあるが、/ウ*ミタ/ > /ウミダ/ の ようである。 これについても知らない人は /ウ*ミタ/ と発音する。 ところが、《先祖が2ヶ所に田圃をもっていて分家するときに海の方のをもらった》ということにすると /ウミダ/ が許される。

ということで、語構成の違いで、連濁の有無があると考えている。 ここで出したのは、アクセントが頭高で連濁せず、平板で連濁であるが、 その逆のパターンもあるので、 うまい定式化はできていない。

2013年5月30日木曜日

「~る」の音韻テンプレートはどんな形か(2)

N.Tsujimura先生講演会の感想。Google+の内容の実質的な再投稿。承前。

Tsujimura先生は動詞の新語「~る」の音韻テンプレートとして (C)V(C)V*r- (*はアクセント位置)というものを考えている。 最後の部分が r- ではなく、ru# なのではないのかが、前の投稿の話。今回は、前半の部分。

*ru# のようにアクセントの指定だけがあり、長さの制約がないのではないか。

僕自身の作例では、1拍でも可能である。 実際に採集できているものは、語幹部分が2拍以上であり、Tsujimura先生もビル・ゲイツに由来する「ビる」だけをあげる。 しかし、《仕事を進めずにギャーギャー騒いでばかりいる》の意味で「ギャる」を作れると思う。 短さに制限があるようにみえるのは、音韻の問題というより、 元の語が再現できないという機能的な問題なのではないだろうか。

さらにCVCV型のテンプレートというより、韻律的なものではないかと思う。それには母音の短縮が関係している。

アクセント位置の母音については、「コピー」から「コピる」になるように長母音の場合、短縮することが多い。 短縮しない場合は、音節を分けるとよくなる。ただし、実例は少ない。僕が拾えたものには人名に由来する「イトウる」がある。 アクセント位置以外の母音についても短縮しやすい。 「グーグル」から「ググる」が有名であるが、 「デニーズ」からの「デニーズる」「デニズる」「デニる」のようにいくつかの形が見つかるものもある。

アクセント位置の母音が短縮されるか、分割されるのは、 重い音節では左側の要素がアクセントを持ちやすいことが関係していると考えると説明できそうである。 OT的に言えば、 アクセント位置を変えてはいけないという制約や重い音節で左側にアクセントがあるという制約より 母音の長さを維持するという制約の序列が低ければよい。 そうすると、母音が短縮されるか、音節が分割される。

元の語が推定できるという制約の位置づけが難しいが、 重い音節がアクセントを持ちやすいという制約と組み合わせることで、 韻律的なテンプレートによって、前にある長母音が短縮されるということも説明ができるようになる。 前に長母音があると重い音節なので、アクセントがないと制約に違反する。 長母音維持の制約の序列が低ければ、短縮した方がよくなる。

そこでCVCV型というより韻律テンプレートの方がいいのではないかと思う。