英語の語形成とアクセント位置がややこしい。 一例を眠れぬ夜に読み始めると徹夜すること間違いなしの 『プログレッシブ英語逆引き辞典』(國廣哲彌, 堀内克明 (編)、小学館, 1999年) を引こう。 -ty "……な性質" の項 (p.1213) から。
第1強制は, (1)直前の母音字が付く場合は 2つ前の音節に, (2) 直前に子音字が付く場合には語頭にある. 例外: entirety.
この説明は不正確である。 実は、-ity の項 (p.683) の「直前の音節に第 1 強勢」 とセットで考えないといけない。
ややこしいのは、(A) 古典語アクセント規則によるものと、 (B) 本来語・フランス語借用語アクセント規則によるものがあるからだ。
(A) 古典語アクセント規則に従うもののアクセント位置は、 ここでは後ろから 3番目と考えておけばいい。 派生語尾を含めて 3番目にくる。
この規則に従うものは -ity が基本形である。 実際、able に対して、ラテン語っぽくして abil- にしてから abílity になる。 ところが、 語基の最後が i の場合に異化 (dissimilation) -ety に変わる。 そこで、anxi-ous に対して anxíety になる。 引用の(1)における「直前の母音字」は、〈e〉に限られるのは、このためだ。
(B) 本来語・フランス語借用語アクセント規則に従うもののアクセント位置は、 原則として接頭辞を除く語頭だが、動詞や一部の形容詞では重い音節にある。 この場合、-ity の -i にあたる母音はフランス語では消えているので、 「直前に子音字」になることがほとんどだ。 これが (2) の場合のことである。 こちらは、派生語尾によって強勢位置が移動しない。 そこで、 前の部分が形容詞として実際にあるものは、形容詞の強勢位置が名詞の強勢位置になる。 したがって、lóyal に対して lóyalty、 entíre に対して entírety になる。
接頭辞は通常、アクセントをもたないので、entirety 以外にも語頭に アクセントがないものがある。 例えば、dislóyal からの dislóyalty、 unsúre からの unsúrety などである。
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