英語にはラテン語に由来する形容詞派生の接辞 -al がある。 これには/l/音の後で使われる -ar という異形態がある。 この使い分けは英語の音韻論で扱われるべきなんだろうか。 僕は無理だと考えるが、 そうしている論文がある。
- Tanaka, Shin-ichi. 2007. On the nature and typology of dissimilation. English Linguistics 24(1) 279-313.
これの 3.2.1 がそうで、/r/と/l/についての間の距離を入れたOCPと忠実性で説明している。 語例が納得できなかったので、凝った検索をするために iOS版の『小学館ランダムハウス英和大辞典』(2nd edn.)をポチっとなしてしまった。 これの -al の項には、次のようにある。僕もこちらの方に賛成である。
もとは -l を含む語幹にはつかなかったが、 最近ついた形も用いられ、意味の区別をする: familiar とl familial.
田中先生は、fa(míli-ar) fa(míli)-al と分析することで、音韻論の中で処理しようとする。 前者だとわたり音の[j]で実現できるが、後者はできないと主張しているが、 OEDのアメリカ発音は両者とも[j]になっている。 また、peculiar はわたり音で記載されているが、conciliarは母音である。 ということはよく使われるか否かによると考えるのが自然である。
-ar と -al の両方があるものを上の辞書から探してみると、 laminar/laminal, linear/lineal, molar/molal, valvar/valval, vulvar/vulvalがある。 この中で韻律が変えられそうなのは linearだけだが、手持ちの辞書にはわたり音がない。 さらに molal, valval, vulval は最適でないはずの形である。 なお、linear/linealは古典ラテン語で両方があるのが確かめられる。
familiar, peculiar を処理するために 2つの/l/の間にフットがあるばあいの制約も付けているが、 そうすると -l-ical の形もひっかけてしまう。
語種ごとに順位がちがう可能性もあるが、/l/のOCPに違反するような語は、 lall, loll, lulll もある。 Urban Dictionary ならさらに blol, clol, plol などもある。
ということで、ラテン語の規則はラテン語にまかせた方がいい。 -ar と -al で意味のちがいがでるのは、 古くからある語に追加して -al の形が作られたからで、valvar/valval, vulvar/vulval は単なる変異のようである。
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