2018年9月21日金曜日

メモ:英語の -one の発音

7タイプあるようである。iOS版の物書堂 G5 で検索。

  1. /-oun/
    これが本則: bone, tone, stone, zone, etc.
  2. /-ʌn/
    one, done, および、それらを含むもの: one, anyone, etc.; done, undone, etc.
  3. /-ɔːn/
    gone, および、それを含むもの: gone, begone, etc.
  4. /-ouni/
    canzone, cicerone などの借用語。イタリア語など。
  5. /-əni/
    anemone などの借用語。ギリシア語。
  6. /-ounə/
    krone のみ。ドイツ語?
  7. /-u:n/
    Scone のみ。ゲール語?

2, 3 はいわゆる sight words を覚えればいい。 4以下の借用語については、他の -oCe で、いつか調べる。

2017年6月30日金曜日

19世紀半ばまで×を into と読んだ

掛け算の記号×を19世紀半ばまで主に into と読み、これがラテン語の対格支配の前置詞 in に由来するようだ。 ラテン語 in は奪格支配で英語の in に、対格支配で into に対応する。

×は現在では times, multiplied by と読む。ところが、times は意外と新しく、順番についても前後があるようである。 他でも書いたが、現在とは逆順の例は次に通り:

The Sign of multiplication is ×. It is read times, or multiplied by.

When placed between two numbers, it shows they are to be multiplied together. Thus, 9×7 is read, 9 multiplied by 7 or 7 times 9. (p.35)

それはさておき、それ以前の読み方 into についてである。百科事典をあげる:

  • Park, Roswell. 1841. Pantology: Or, A Systematic Survey of Human Knowledge; Proposing a Classification of All Its Branches and Illustrating Their History, Relations, Uses, and Objects; with a Synopsis of Their Leading Facts and Principles; and a Select Catalogue of Books on All Subjects, Suitable for a Cabinet Library. Hogan & Thompson. https://books.google.co.jp/books?id=uwhDAAAAIAAJ

The sign of multiplication, (×), called St. Andrew's cross, is read into, and placed between quantities that are factors:

これがラテン語に由来することが、19世紀初頭の教科書に書かれている。 ducere は "ひきいる/ひき出す/ひき伸ばす" を意味する動詞である。

  • Ludlam, William. 1809. The Rudiments of Mathematics: Designed for the Use of Students at the Universities : Containing an Introduction to Algebra, Remarks on the First Six Books of Euclid, the Elements of Plane Trigonometry. John Evans. https://books.google.co.jp/books?id=gB9LAAAAYAAJ

The mark for multiplication is ×, and is called into; thus 5 × 2 is read 5 into 2, meaning 5 multiplied by 2. The phrase into is borrowed from Latin: for Ducere numerum in numerum is to multiply one number by another.(p.29)

いっぽうOEDのネット版は数学用語の廃用として into の項で次のように説明している。

Used to indicate multiplication, as to multiply x into y (by considering the multiplicand replicated once for each unit of the multiplier).

ただし、単独の into での説明はない。

なお、OEDの文例で Barrow のものだけが ducere に対応する draw がある。 『原論』の英訳ではあるが、原文にはない Barrow の加筆による部分にある。 前後の文脈を含めると次のようであった。

  • Barrow, Isaac. 1705[1660]. Google Play の書籍 Euclide's Elements: The Whole Fifteen Books Compendiously Demonstrated. To which is Added Archimedes Theorems of the Sphere and Cylinder, Investigated by the Method of Indivisibles. E. Redmayne. https://books.google.co.jp/books?id=pmpbAAAAQAAJ

If the side AB be of a right-angled parallelogram ABCD, be conceived to be carried along perpendiculary thro' the whole line BC, or BC thro' the whole AB, the Area or content of the Rectangle ABCD shall be produc'd by that motion. Hence a rectangle is said to be made by the drawing or multiplication of two contiguous sides. For examples sake; let AB be supposed four foot, and BC be three: draw 3 into 4, there will be produced 12 square feet for the Area of the Rectangle. (p.29)

近代ラテン語の例は、次のものが分かりやすい。 ducere は仮に「倍する」と訳した。 そのため multiplicare の系列の multiplex を通常とは違うように訳している。

Multiplicare numerum A per B, vel (ut aliis terminis solent Mthematici loqui) ducere numerum A in B, est invenire tertium C, qui toties contineat numerum A, quoties unitas continetur in B. Vel multiplicare A per B, est invenire tertium C, qui toties sit multiplus de A, quoties B est multiplex unitatis. Numerus A dicitur Multiplicandus, B Multiplicator; C Productum.(p.14)

Signum Multiplicationis istud ×. Sic 2 × 4 = 8, significat, 2 ductum in 4 generare 8. (p.15)

数AをBにより「乗じる」、 もしくは(そのように数学者たちは言う習慣なのだが)、 ducere numerum A in B [数AをBにまで倍する] とは、 Bの中に1が含まれるだけ、A を含んでいるような 第3のもの C を見つけることである。 もしくは、数AをBにより「乗じる」とは、 Bが1のどれだけ重ねであるだけ、 Aを重ねたような第3のものCを見つけることである。 数Aは「被乗数」、Bは「乗数」、Cは「積」と呼ばれる。(p.14)

「乗法」の記号はこの×である。 そこで 2 × 4 = 8 は、 2 ductum in 4 generare 8 [2 の倍されたる 4 までは、生む 8] を意味する。(p.15)

ducere の受動分詞 ductum が省略され、in のみが対応する英語 into で使われていたようだ。

2016年6月19日日曜日

-ar と -al の異形態を英語の音韻論で面倒みるの?

英語にはラテン語に由来する形容詞派生の接辞 -al がある。 これには/l/音の後で使われる -ar という異形態がある。 この使い分けは英語の音韻論で扱われるべきなんだろうか。 僕は無理だと考えるが、 そうしている論文がある。

  • Tanaka, Shin-ichi. 2007. On the nature and typology of dissimilation. English Linguistics 24(1) 279-313.

これの 3.2.1 がそうで、/r/と/l/についての間の距離を入れたOCPと忠実性で説明している。 語例が納得できなかったので、凝った検索をするために iOS版の『小学館ランダムハウス英和大辞典』(2nd edn.)をポチっとなしてしまった。 これの -al の項には、次のようにある。僕もこちらの方に賛成である。

もとは -l を含む語幹にはつかなかったが、 最近ついた形も用いられ、意味の区別をする: familiar とl familial.

田中先生は、fa(míli-ar) fa(míli)-al と分析することで、音韻論の中で処理しようとする。 前者だとわたり音の[j]で実現できるが、後者はできないと主張しているが、 OEDのアメリカ発音は両者とも[j]になっている。 また、peculiar はわたり音で記載されているが、conciliarは母音である。 ということはよく使われるか否かによると考えるのが自然である。

-ar と -al の両方があるものを上の辞書から探してみると、 laminar/laminal, linear/lineal, molar/molal, valvar/valval, vulvar/vulvalがある。 この中で韻律が変えられそうなのは linearだけだが、手持ちの辞書にはわたり音がない。 さらに molal, valval, vulval は最適でないはずの形である。 なお、linear/linealは古典ラテン語で両方があるのが確かめられる。

familiar, peculiar を処理するために 2つの/l/の間にフットがあるばあいの制約も付けているが、 そうすると -l-ical の形もひっかけてしまう。

語種ごとに順位がちがう可能性もあるが、/l/のOCPに違反するような語は、 lall, loll, lulll もある。 Urban Dictionary ならさらに blol, clol, plol などもある。

ということで、ラテン語の規則はラテン語にまかせた方がいい。 -ar と -al で意味のちがいがでるのは、 古くからある語に追加して -al の形が作られたからで、valvar/valval, vulvar/vulval は単なる変異のようである。

2016年6月18日土曜日

南フランスの新地域圏の名称問題

フランスにおいて州にあたるものは région「地域圏」と呼ばれる。 ただし、ドイツやスペインの州のように権限が強いわけではない。 南フランスの地域圏のうちの Languedoc-Roussillon と Midi-Pyrénées が loi no 2015-29 により統合され、 現在は仮にLanguedoc-Roussillon-Midi-Pyrénéesと呼べれている地域圏がある。 この地域圏の名称が、6月24日に地域圏議会で決められる。 それに先立ち、委員会で候補が絞られ、ネットで意向投票が行われた。 (#leNomdeMaRegion http://www.regionlrmp.fr/le-nom-de-ma-region

候補となったのは、次のものである。

  • Languedoc
  • Languedoc - Pyrénées
  • Occitanie
  • Occitanie - Pays Catalan
  • Pyrénées - Méditerranée

この地域圏は伝統的な地域区分でラングドック(Languedoc, Lengadòc)地方 が大部分であるが、 ルシヨン(Roussillon, Rosselló)も含んでいる。 言語的には、オック語(オキシタン語 occitan) の地域が広く、ラングドック方言 (lengadocian) が大部分であるが、 東にプロヴァンス方言 (provençal)、西にガスコーニュ方言 (gascon) の地域も含む。 さらに、ルシヨンはカタルーニャ語(catalan, català)の地域である。 ただし、現代では住民のほとんどがフランス語に移っている。 継承語を使える人たちは、それほど多くない。 使える人たちでも若いものは、二言語の学校 Calendretaで学んだ人が多い。

問題になる名称は、Occitanie "オック語のくに" と Pays Catalan "カタルーニャ人のくに"である。

オック語は、この地域圏の他に Aquitaine-Limousin-Poitou-Charentes, Auvergne-Rhône-Alpes, Provence-Alpes-Côte d'Azur でも使われる。ただし、いずれの地域も他の言語圏であったところも含む。 そういう中でオック語全体のための Occitanie を使っていいのかという問題があった。 また、姉妹関係にあり、同じ少数言語として活動では助けあってきたカタルーニャ語の地域との関係も考えなければならなかった。

意向投票の結果が6月16日づけで出た。

コンドルセ方式なので、結果が複雑だが、 とりあえず約20万中の9万ぐらいが1位に Occitanie を選んだ。

とはいえ、人口550万を越える地域圏の20万なので、多くの人の無関心と一部の活動家の働きによる結果である。 Jornalet紙の記事にあるように、オック語の活動家の中でもこの名称に対する意見は分かれている。 また、あくまでも意向投票である。 Occitània の民族政党はいくつかあるが、 地方レベルにおいても環境派と結びついてようやく当選できることもあるぐらいのレベルなので、 議会での影響力はほとんどない。 おそらく対立をまねかない無難なものが選ばれるのではないかと考える。

2016年6月13日月曜日

日本諸方言における前鼻音のOTによる一解釈

日本語の古語にあったとされる前鼻音が弁別を強化 enhance するため、 つまり素性を追加することで弁別しやすくするためであったと考えてみようという試みである。 OT(最適性理論)を使っている。 元ネタは、次のもの(直接の参照はKindle版):

  • Flemming, Edward. 2005. Speach Perception and Phonological Contrast. In Pisoni, David, & Remez, Robert (eds.). The Handbook of Speech Perception. Blackwell Handbooks in Linguistics. Malden, MA: Blackwell.

ただし、Flemmingがよくないとしている方法を強引を使っている。 アイディアは単純なのだけど、テクニカル。

使う制約はFlemmingのものだが、PrenasalizedはFlemmingが妥当ではないとしているもの:

*VTV
母音の間では無声阻害音はよくない。
Prenasalized
有声阻害音なら前母音鼻音化するもの。
Ident(Nasal)
鼻音性は基底と表層でできれば同じ。
Ident(Voice)
有声性は基底と表層でできれば同じ。

まずは、東北の /mato/ = [mado], /mado/ = [maⁿdo] を作ってみる。 ここでのミソは、同順位の制約の違反は足し算にならないこと。

(1)a. 東北方言、基底は無声
/mato/*VTVIdent(Voice), PrenasalizedIdent(Nasal)
 mato*!
⇒mado *, *
 maⁿdo *, *!
(1)b. 東北方言、基底は有声
/mado/*VTVIdent(Voice), PrenasalizedIdent(Nasal)
 mato*!
 mado ,*!
⇒maⁿdo , *

これの前にあったはずの古代日本語のばあい。ただし、*VTVの位置はIdent(Voice)以下ならどこでもいい。

(2)a. 古代日本語、基底は無声
/mato/Ident(Voice), *VTVPrenasalizedIdent(Nasal)
⇒mato ,*
 mado*, *!
 maⁿdo*, *!
(2)b. 古代日本語、基底は有声
/mado/ Ident(Voice), *VTVPrenasalizedIdent(Nasal)
 mato ,*!
 mado *!
⇒maⁿdo *

PrenasalizedとIdent(Nasal)が同順位ならゆれている状態。Ident(Nasal)>>Prenasalizedなら現代の前母音がない状態。

2016年3月26日土曜日

メモ -ossの発音

承前。-ossで方言形、外国語を除く。

  1. 本命 /ɔ/: boss, foss, loss, toss, ...
  2. 対抗 /ɑ/: floss, gloss, doss; 語末以外はこれなので、切断によるものも: pross
  3. 例外 /oʊ/: gross

2016年3月24日木曜日

メモ -ough の発音

承前 -ough# の発音。方言、廃語、固有名を除く。複合語、派生語は

  • 本命: /ʌf/ 例: enough, rough, tough, slough "抜け殻", ...
  • 対抗: /aʊ/ 例: bough, plough(=plow), slough "ぬかるみ", ...
  • 例外: /oʊ/ 例: dough, though
  • 例外: /ɔf/ 例: cough, trough
  • 例外: /u/ 例: through
  • 例外: /ʌp/ 例: hiccough (=hiccup)
  • 強勢なし: /oʊ/ (さらに /ə/) thorough, borough, furlough, ...