2024年1月28日日曜日

規則がいっぱい (スラド日記 2016-02-19)

 ;; コニー・フランシスは関係ない。

僕たちが扱う規則には、いろいろなレベルがあるよねという話。 交通規則で譬えてみる。

守らなければいけないと思われているのは:

(1) 歩行者用信号の青が点滅しているなら、 「歩行者は、道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者は、速やかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならない」。 (「道路交通法施行令」昭和35年政令第270号、平成27年政令第421号、第2条)

実際にほとんどの人がやっているのは:

(2) 歩行者用信号の青が点滅しているなら、 急いで渡り始めるし、横断しているなら渡ってしまう。

けれども(1)(2)の下のレベルに守ろうとする意識すらないものがある:

(3) 渡っても支障がないときに、歩きか走りで渡る。

さらにヒトとして破りようがないものがある:

(4) 渡るときには地上を移動する。

言語学で扱う規則は(2)、(3)、(4)のレベルのものなのだけど、 分野外の人は(1)のレベルの話をなぜか求めてくる。

現実主義と代数主義、実体と関係 (スラド日記 2016-01-07)

 比較言語学では、系統関係がありそうな諸言語を比較して、 その共通の祖語を「再建」、つまり、どういうものかを推定する。 この仮説としての祖語の位置づけについては、 現実主義(realism)と代数主義(algebraism)の立場がある。

例えば、英語/ラテン語を比較するとき、 (father, pater), (brother, frater) のようなものから、 (f, p), (b, f) の対に対応する音があることが、推定できる。 通常、それぞれ、*p, *bh (*は文献にない再建形) とされる。 現実主義では、それぞれ、両唇無気無声閉鎖音、両唇有気有声閉鎖音という実体であると考える(後者は音声学的には bʱのような息もれ音とする方が自然であろう)。 他方、代数主義では、それぞれ、単なる項にすぎないと考える。 何か音はあるが、派生した言語の音の関係こそが大切で、 実体はどうでもいい。 区別のためのラベルにすぎない。

さて、 インド・ヨーロッパ祖語については、少数説として 声門音仮説がある。 主要説ではグリムの法則で表される推移で、 ゲルマン語派が音を大きく変えたと考えるのに対して、 声門音説では逆に他の語派が音を大きく変えたと考える。 どちらの立場でも説明は可能である。

個人的には、現実主義と代数主義に分けて考えるより、 仮説に実体についての部分と構造についての部分があると考える方がよいと思う。

新年度なんでゼミで語るためのメモ (スラド日記 2016-04-03)

 (1) 我々が研究を(古典的に)するときに次の2つの公準(要請)がある。これらは、哲学的にはツッコミどころがあるが、他よりはうまく機能してきた。

  • 世界は普遍的な原理と偶有的な特殊性からなりたっている(斉一性)。我々の研究は原理を明らかにすることでも、特殊性を明らかにすることでも、どちらでもよい。
  • 世界を散文的に記述し、それを知識として共有し、蓄積していくことができる(合理性)。ただし、それには確率が使われたり、何らかの変数をもつ関数が使われるかもしれない。

(2) しかし、普遍的なものは無限を含むので、実証/帰納は完全には不可能である。

  • 無限集合を対象とする原理を有限のデータから完全には明らかにできない。
  • 原理が明らかでないので、何が偶有的なのかも完全には明らかにできない。

(3) そこで我々が研究するときには3つを組合わせて、仮説を改善していかなければならない。

  • a. データより仮説を作り出す帰納(ばあいによってはabduct)。
  • b. 仮説をもとに未知のデータのふるまいを予想する演繹。
  • c. データをもとに複数の仮説の優劣を判断する反証。

(4) 反証が大切であることは、我々の研究の結論が「誤り」であることに問題がないことを示す。 むしろ、研究を進めるのは、「誤った」仮説を出し続けることであり、それこそが求められる。

(5)ただし、我々がここで忘れてはいけないのは、 否定ずみの仮説とその否定に使われたデータの蓄積があることである。 そのため、次の条件の少なくとも1つは、新しい仮説を出すばあい、社会的には求められる。

  • 今まで未知のデータが、旧仮説と矛盾するが、新仮説と矛盾しない。少なくとも、誤差を小さくする。
  • 複数の旧仮説を置き換えることで、既知データのより広い範囲を統一的に説明可能にする。
  • 旧仮説を置き換えることで、同じことを演繹できても、演繹が簡明になる。

(6)いっぽう、我々研究者が真摯であってもミスを冒しかねない存在であり、また、かなりの現象が確率により記述されるものなので、 蓄積されていく知識を調べ直すことができるような形で我々は成果を提出しなければならない。 そこで、知識の蓄積を阻害する次の3つは、研究者にとって、許しがたい行為である。

  • 実際には存在しないデータを出す捏造(fabrication)
  • データを自説に都合のよいように加工する(falsification)
  • 蓄積をさらに遡ることを阻害する盗用(plagiarism)

(7) なお、(3b)の演繹は自然に出来るようにはならず、訓練が必要である。練習問題を解き続けなければならない。

(8) また、(3a)の帰納には、当然のことながら、データが必要である。 ただし、データをみるだけで仮説が作れるわけではない。 データをいろいろな形に整理しなおしてみたり、別の分野のデータとつきあわせをしてみたりすることで 積極的に作り出さなければならない。

(9) さらに、(3c)の反証の形で論文を書くためには、否定したい旧仮説が必要である。 これを提示してくれるのが、先行研究である。 先行研究どうしのつきあわせをすることで、自分の調査や実験で何をしたいのかが見えてくる。

(10) ところで、(7-9)は、各論の教科書に少なくとも途中までなら書いてある。 だから、それを読めるようになることが第一の目標となる。

(11) ただし、教科書は紙幅が限られているので、データは限られている。 自分で積極的にデータを集めていく必要がある。 それは分野によっては、日常生活の中でも可能だ。

(12) そうはいっても大切なのは、好きなことに取り組み、日々、面白いことを探しだして楽しむことだ。

(13) ここで言っている小難しいことは、実は、その楽しいことを共有するために工夫されてきた方法にすぎない。

;; リストの中にリストを入れようとすると、うまくいかない。

例をたくさん入れて、提示の順番も変えないと。

手抜きで、指数分布からポアソン分布へ (スラド日記 2018-05-06)

 Erlang 分布が要る。 これは、同じパラメタの指数分布の確率変数の和の分布。 分布関数を次のように予測。

f(t; n) = λ^n t^(n-1) / (n-1)! * exp(-λt).

f(t; 1) = λexp(-λt) なので、指数分布1個だけのときは大丈夫。

折り畳みで、 f(t; n)=∫(0, t) λ^(n-1) x^(n-2) / (n-2)! * exp(-λx) * λexp(-λ(t-x))dx =∫(0, t) λ^n x^(n-2) / (n-2)! * exp(-λ) dx
=[λ^n x^(n-1) / (n-1)! * exp(-λ)]0 t
=λ^n t^(n-1) / (n-1)! * exp(-λt).

数学的帰納法から一般に大丈夫。

上側累積確率を G(t; n) とすると、

G(t; n)=∫(t, ∞) λ^n x^(n-1) / (n-1)! * exp(-λx) dx
=∫(t, ∞) λ^(n-1) x^(n-1) / (n-1)! * {- exp(-λx)}' dx
=[λ^(n-1) x^(n-1) / (n-1)! * {- exp(-λx)}]t  +∫(t, ∞) λ^(n-1) x^(n-2) / (n-2)! * exp(-λx) dx.

つまり、G(t; n) = λ^(n-1)t^(n-1) / (n-1)! * exp(-λt) + G(t; n-1).

t=1 で, nを1つ増やして、 G(1; n+1) = λ^n / n! * exp(-λ) + G(1; n). ついでに、G(1; 1) = λ^0 / 0! exp(-λ).

G(1; 1) は、1回目が起こるのが t≧1のとき、つまり、0<t<1 で0回のとき。 このときは、ポワソン分布の確率関数で大丈夫。

G(1; 2)は、2回目が起こるのが t≧1のときだけど、この中には、 1回目が起こるのがt≧1のときも含まれるので、 G(1; 2)-G(1; 1)を考えると、0<t<1 で1回のときになる。

同じようにして、G(1; n+1)-G(1; n)が 0<t<1 でn回のときで、 その確率は λ^n / n! * exp(-λ) で、ポアソン分布のになっている。

出オチで、ポアソン分布から指数分布 (スラド日記 2018-05-06)

 1単位時間あたりに平均でλ回起こる稀な現象が、 1単位時間あたり r 回起こる確率が、

P(r; λ) = λ^r / r! * exp(-λ).

ということは、t単位時間あたりの平均回数が λt 回になるから、
P(r; λt) = (λt)^r / r! * exp (-λt).

なので、P(0; λt)=exp(-λt).

これが、時刻が t 以上のときに初めて起こる確率でもある。

時刻が 0 から t までに起こる確率を F(t) とすると、
F(t) = 1 - exp(-λt).

そういう分布の密度関数は f(t) = F'(t) = λexp(-λt).

ということで、回数がポアソン分布なら最初に起きるまでの時間は指数分布。

ポアソン分布の再生性から、間の時間も指数分布。

逆方向を示すのはアーラン分布を経由するので、もうちょい長いはず。

二外用辞書の勧め (スラド日記 2015-04-02)

 ;; この項目は、いつもどおり個人の考えであり、 勤務先の語学教育とは無関係である。 なにしろ本務校で二外をもったことがない。 実は、非常勤も15年くらいしていない。

新学期で、第二外国語を始める人もいるかもしれません。 教科書に単語リストが付いているかもしれませんが、 ぜひ辞書を買いましょう。

電子辞書のばあい、 高校生向けのものから大学・一般向けへの買い替えで、 ★★語モデルを買うのが簡単です。 とはいえ、今までの辞書にコンテンツを追加することができるかもしれません。

Android や iOS にもちゃんとした★和辞典があるので、 スマートフォンやタブレットにインストールすることもできます。 なお、ダメな★和辞典もあるので、元になった紙の辞典の評判、 アプリの使い勝手の評価を調べてから購入しましょう。 ただし、授業中にこういうものを使うのを 嫌がる先生もいるかもしれません。

電子辞書ではコンテンツの選択肢があまりありませんが、 できれば発音が聴けるものを選びましょう。 その他の注意点は、この下の紙の辞書の注意点と同じです。

紙の★和辞典にも、いくつかのタイプがあります。

  1. 小型だが、何万語もある携帯用のもの。
  2. 小型から中型で、数千語の初学者向けのもの
  3. 中型薄めで、初級・中級向けのもの(電子辞書に多い。)
  4. 中型厚めで、10万語ぐらいの中辞典(言語によってはこれしかまともな電子辞書がない。)
  5. 大型

学びはじめの人は、1、4, 5のタイプは買わないほうがいいでしょう。 これらは中級以上の人が使うためのものです。 携帯用では単語や熟語ごとに載っている情報が少なすぎて困ります。 逆に、中辞典や大型のものでは情報が多すぎて困ります。

2の初学者向けのものは、発音がカナ表記で、 変化形でも引けるようになっているものが多いようです。 このタイプを「邪道」として嫌がる先生もかなりいますが、 私はつぎの条件つきで最初に使うことを勧めます。

  • 変化形を引くときでも、元の形でできるだけ引こうとする。
  • 発音はカナで覚えるのではなく、綴りをもとに★★語の発音で覚える。

これをできるようにするには、 教科書をしっかりやるのと並行して、 音源付きの単語帳をシャドウイングしながら覚えていきましょう。 このタイプの辞書は、前期で卒業するのが目標です。

1冊だけなら、3の初級・中級向けにしましょう。 電子辞書では選択肢がないかもしれませんが、 紙では数種類あるのが普通です。 大学や教員の指定のものがあるばあいには、それを買いましょう。

指定がないばあいは、できるだけ手にとって選びましょう。 まず「まえがき」を読んで、 どういう方針で編集されているのかを確認します。 その次に「凡例(使い方)」に目を通してから、 まだ分からなくても、いくつかの項目を引いてみましょう。

  • 難しい単語には、だいたい英語と似たものがあるので、 自分が感心がある分野の専門用語を引いてみて、その分野で信頼できそうかを確認する。
  • 2000語レベル重要語の記号(凡例で調べておく)がついたものに目を通して、例文や用法の説明がしっかりしているかを確認する。
  • 巻末に不規則変化の表があったら、100語レベル最重要語のものを探して、その単語の項目に目を通して、例文や用法に加えて、文法の説明もしっかりしているかを確認する。

紙のばあいには、手になじむか、表紙や版面に好感がもてるかも 大事な判断基準です。毎日使うものですから。

英語、文字足りてない感 (スラド日記 2018-09-21)

 やっぱり英語が嫌いや……。

例えば、〈-ull〉という綴りなんだけど、 〈u〉は「短く」読むときは /ʌ/(現代では[ɐ]に近い発音の方言が多い)が、 本則なのだけど /ʊ/ と発音することがある。 例えば、標準的な発音だと、gull は /ʌ/。 それに対して、pull, bull, full の唇音始まりは /ʊ/ だけど、 mull が裏切って /ʌ/。 これ実は方言ごとに、/ʌ/ になっている割合が違うので、 母語話者は適当でいいけど、 僕たち外国人には、なんとなく標準発音をしろという圧力あるし。

つまり、この /ʊ/ なんだけど、短い [u] が /ʌ/に変化したとき、 残ったもの。 short u を /ʌ/ に取られたので、 他にいい文字がなく、二重字に頼って short oo と言われている。

実際、この〈oo〉自体は /oː/ > /uː/ の変化が本則なのだけど、 なぜか /uː/ > /ʊ/ の変化までしているものがある。 food は /uː/ だけど hood は /ʊ/、 逆に foot は /ʊ/ だけど hoot は /uː/ とか、 どこまで外国人泣かせなんだろう……。

それはともかく、short oo こと /ʊ/ を、 発音記号を使わずにどう説明しているのかと、 USAで出された高校生向け単語帳をみてみたのだが、 発音キューのところにないなあ。

基本的に「難しい」感じの語には出て来ないからなあ。 〈u〉でも〈oo〉でも 母語話者なら普通に知っている単語に出て来るし。

けど、外国人、とくに読み書きメインだと、こういう「易しい」やつが困る。

どっかから、sight words のリストを拾ってきて、なんとかしよう。