「2つの封筒問題」でググったら「無限や極限値にまつわる問題ではないか」というブログが上位にあった。
「2つの封筒問題」は確率の問題としては実は3タイプある。 この人が問題にしているのは、僕が単なる極限の問題だからと、 コメント欄でふられない限り言及しないやつ。
問題を確認しておく。
2つの区別できない封筒があり、 片方にはもう片方の倍の金額が入っている。 交換したときの増減の期待値で交換するかを決めるとする。
- 【基本型】未開封で決定し、未開封で交換する。
- 【開封型改】未開封で決定し、開封して交換する。(意図はともかく、リンク先で検討しているのは、このタイプ)
- 【開封型】開封して決定し、交換する。
手抜きで説明する。 基本型だと、次のように期待値の計算をしている。 ただし、(pn)が確率、(an)が増減の列。
p1{a1+(-a1)} + p2{a2+(-a2)} + p3{a3+(-a3)}+...
つまり、波かっこ内が0なので、和も0というのが、基本型。
開封型改だと、次のような計算になる。
p1a1 + {p1(-a1)+ p2a2} + {p2(-a2)+p3a3} + {p3(-a3) + p4a4} + ...
足し算の順番を変えただけなのだけど、ここで無限がからんでくる。
- 胴元の入れる金額が有限なら、有限級数なので、順番を変えてよく、基本型と同じで、増減の期待値は0。
- 胴元の入れる金額に上限なくても、その期待値が有限なら、 増減の期待値の級数は絶対収束するので無条件収束する。 つまり、順番を変えてよく、基本型と同じで、増減の期待値は0。
- 胴元の入れる金額に上限がなく、その期待値も発散するなら、 和の順番は変えられない。これ以上は、具体的な確率分布による。 増減の期待値が正の有限値になる分布も、無限大になる分布もある。
これらに対して、開封型は、 p1a1 /p1 か {pk(-ak) + pk+1ak+1}/(pk+pk+1) を計算するだけ。 これの正負は分布に依存。
ちなみに開封型改は開封型の平均(期待値)なので、 胴元の入れる金額の期待値が有限のときには、 一部の人が言うような「開封型の期待値が常に正」ということはありえない。
あとは、おまけ。 2つの封筒問題はひっかけの誘導がやはり秀逸。
手元の封筒に x円が入っていたとする。 このとき、もう片方は x/2 円か、2x 円である。 封筒が区別できないので、これらが等確率となり、 交換後の増減の期待値は (x/2 - x) * 1/2 + (2x - x) * 1/2 = 0.25x 円。 これが正なので、交換した方が得である。
これのどこかひっかけなのかを、できるだけ素朴に説明する。
未開封の段階だと 未知数aを用いて、目の前にある封筒内の金額は a円か2a円のいずれか。
- 手元がx=a円のとき、もう片方は、x/2=a/2円がありえず、2x=2a円のみ。
- 手元がx=2a円のとき、もう片方は、x/2=a円のみで、2x=4a円がありえない。
つまり、未開封の段階だと x/2 と 2x はxの中にある数が別のときなのだから、 同じ式の中で使ってはだめ。
開封した段階だとxの中の数は同じになる。 ただし、 胴元が持ってきたのが x/2円とx円なのか、x円と2x円なのかは、分からない。 合計金額が 3x/2 円か3x円かは、胴元の気持ち次第で、 等確率とは限らない。
なんの深い話もなく、我々の頭がバグっているだけ。
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