2024年1月28日日曜日

「母数」メモ: 薩摩辞書 (スラド日記 2016-09-13)

 『日国』[分子」の出典が納得できなかったので、 当時の英和辞書を国立国会図書館デジタルコレクションで見てみた。

「母数」「分母」は『慶応再版英和対訳辞書』(1867)、 「分子」は『数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書』(1889)で、 差をつけている。 けど、「分子」がもっと早くになるのではないかと探してみた。 なお、「分母」「分子」は古代中国の 『九章算術からあり、 和算でも使われた語。

高橋新吉, 前田献吉, 前田正名 (eds.). 1869. 『和訳英辞書』 American presbyterian mission press. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1871455

Denominator, s. 名ヲ付ル人. 母数(算術ノ語)

Dividend, s. 分チ [「被除数」にあたるが一般の意味]

Divisor, s. 分母 算術ノ語 [「除数」のはず]

Fraction, s. 分数(算術ノ語ニテ一ヨリ下の数ヲ云ウ[ママ])

Numerator, s. 算エル人(算術ニテ奇零の分子)

Rate, s. 価。割合。相場。度。運上。位

細かい差はあるけど、同年の『英和対訳袖珍辞書』でも同じようなものなので、 numerator が《分子》の意味で江戸末・明治初からあることが分かる。 なお、「奇零」は《端数》のこと。 numerator, denominator はペアなので denominator の「母数」は最初から《分母》で いいと思う。前に書いた ように実際の用例もみつかる。

ただ、そうすると《元高》の意味に分かれたのがよくわからない。 当時の英語の教科書で「歩合算」にあたる部分をみても、あまり対応しない。 一応、antecedent : consequent, dividend÷divisor, numerator / denominator のはずだけど、consequent は当時の英和に算術語の訳語がない。

ついでなので、藤沢の対訳。「実」「法」は和算からの用語のはず。

藤沢利喜太郎 (ed.). 1889. 『数学用語英和対訳字書』 博聞社. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826493

Denominator. 分母

Dividend. 実,被除数

Divisor. 法, 除数

Numerate. 分子

[Rate], Percent. 歩合

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