- 松井 和夫. 1928. 『低学年の算術教育』東京: 明治図書. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1275042
- 高木 佐加枝. 1931. 『算術教育の分野と新使命』(東京高師新教育叢書). 東京: 郁文書院. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1452871
このちょい前に黒表紙(藤沢の作った算数の教科書)の3次改定。 塩野直道が主導した。
立式と九九の対応が問題。上の pp.188-189:
(1) 九九の呼声
算術書の総九九に於ては、 常に「乗数」「被乗数」「積」の順序に九九を唱える。例えば
4銭×2 = 8銭 ………… 二・四 8
2銭×4 = 8銭 ………… 四・二 8
5×3 = 15 ……………… 三・五 15
3×5 = 15 ……………… 五・三 15の如く、其の呼声の合理的ならしめて居る。然るに一部総九九主張者の中には、
4銭×2 = 8銭 ………… 四・二 8
2銭×4 = 8銭 ………… 二・四 8
5×3 = 15 ……………… 五・三 15
3×5 = 15 ……………… 三・五 15の如く、常に「被乗数」「乗数」「積」の順序に唱え、 之を以て順九九に比し合理的であると称して居った。 而し之は文部省のとは正反対の呼声である。
以上は「乗数」「被乗数」に依って其の呼声も決定し、 乗法と九九とを合理的に結合しようとしている。
古い立場の説明、p.189:
更に順九九に於ては
4銭×2 = 8銭 ………… 二・四 8
2銭×4 = 8銭 ………… 二・四 8
5×3 = 15 ……………… 三・五 15
3×5 = 15 ……………… 三・五 15呼声は「被乗数」「乗数」の中、数の小さな法を先に呼び、 乗法から抽象され器械化されたものであっても乗法とは全く別なものである。 総九九が何れも呼声八十一箇あるのに反して、 順九九に於ては四十五箇の呼声で足りて居る。 而して呼声は三・五15でも 5×3 と 3 × 5 とは同一とは考えなく、 乗法に於ては乗数、被乗数を明瞭に区別する。
文部省の立場というのは修正趣意書。本当はこれを拾ってくるべきだけど、 めんどうなので、下から。pp.191-192:
私の考えを述べるに先だって文部省編纂の修正趣意書の中から、 総九九校正についての部分を抜粋すれば次の如くである。
総九九を唱うるに当り、被乗数と乗数とは何れを先に唱うべきかを実地教授者につきて検せるに、 一定され居らざるが如し。 例えば「二三6」とは「2の3倍は6なり」という意とすべきか、 或は「3の2倍は6なり」という意とすべきか。 本教科書に於ては之を「3の2倍は6なり」との意とし 即ち乗数・被乗数・積の順序に於て九九を唱うることとせり。 3×2=6なる式は「3ノ2倍は6なり」という意なるを以て、 式に於ける順序よりいうも、 又思考上の順序よりいふも、九九を唱えるに被乗数・乗数・積の順序に唱うるを適当とするが如く見ゆれど、 2の掛算九九とは乗数2なる場合の九九なりと見るを正当なりとし、 斯かる見地よりして本書に於ては九九を唱うるには乗数・被乗数・積の順序を以て呼ぶこととしたり。 且斯く定むるときは筆算の乗法に於ても甚だ便利にして、其の場合に乗数を脳裏に記憶し思けば、 被乗数の各桁の数字を見つつ其の乗数の掛算九九を用いて計算を行い得べく、 又筆算の除法に於ても常に法を冒頭に置く掛算九九を用うるを以て商を書き誤る憂なし。
なお、下の著者は、文部省の立場に反対で (p.193):
…… この見地より見て現今多くの算術教育者は、
「掛算九九の構成は累加法により被乗数先唱とする。」
と云う様に一致している様である。
…… 即ち累加に依って九九を構成して行く方が便利であると信ずるので、 唱え方にしても被乗数・乗数・積の順序に唱えて行った方が便利である。
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