おかしいなあ……。 僕は〈遠山先生を含めて数教協では、掛算に順序があるが、 その順序は便宜的なもので「推奨」にすぎない〉とずっと書いている つもりなんだけど。 僕が読んできたものだと、 小学校の実践報告として批判されたものを除くと、 順序を義務だと明言しているものはないんだが。
3行ずつでマトメるのが筋だけど、5行ずつでマトメとおくと:
- 日数教の立場:
- 掛算は数の操作である。
- 定義には本質的に順番がある。
- 交換則は小学校の範囲で証明ができないが、定理である。
- 逆順も正しいが、公式にしない。なので、毎回示すのが義務である。
- あとの段階で公式として共有しているものには逆順なものもあり、 その場合は当然、逆順でもいい。
- 数教協の立場:
- 掛算は量の関係を抽象化したものである。
- 定義には順番があるが、それは異種の量を区別するための便宜的なものである。
- 交換則はシェマから自明の系である。
- 逆順でもかまわないが単位はつけるべきだ。けど、順序を教師と合わせてくれるとうれしい。
- あとの段階で公式として共有しているものには逆順なものもあり、 その場合は当然、逆順でもいい。
;; まあ、現場の先生は、それぞれ一枚岩ではないので、 こんな簡単にできないんだけどね。
僕が順序批判者にぶつぶつと文句を言っている理由は、 共通する 5 を無視していることと、 決定的にちがう 4 を無視していることだ。 数教協における掛算の順序は、 まずは教師がまとめるためのもので生徒に強制するものではない。 ただし、その順序で考えるための誘導はしていく。
例えばである。 掛算に交換則があるので、dy = dx ・ f'(x) とか書いてもかまわない。 実際に多重積分のときに対応関係を明確にするために書くことがある。 ただし、違和感があるはずで、 とくに理由のないところで書かれたら、 dy = f'(x) dx と直してしまう人もいるだろう。 こういうのが、社会学の用語だと regularity norm と呼ばれているもので、 〈破っても間違ってはいないけど守らないと変〉というものだ。 遠山先生や銀林先生は、そこまで考えていなかったと思うけど、 regularity norm には ideology を「押しつける」機能があり、 ここでは「(全体量) = (1当り量)×(いくつ分)」というものを定着させる 役割がある。
;; そういえば、確か、「の付き」の教科書で dy = f'(x) dx と書こうとして、検定で修正させられたはず。
「(全体量) = (1当り量)×(いくつ分)」のような ideology が 高度な数学の学習を阻害すると考える向きもあるようだが、 それは話は が逆だと思う。 この変異形が大学までずっと出てくる。 むしろ、これを身につけなければイメージ操作ができない。 次のようなものも変異形だ。
微分 〜 (全体量の変化)≒(瞬間の1当り量)×(いくつ分の変化);
積分 〜 (全体量)≒(初期値) + Σ(瞬間の1当り量)×(いくつ分の変化);
内積 〜 (全体量) = (xの1当り量)×(xのいくつ分)+(yの1当り量)×(yのいくつ分).
おまけ: 内積は、高校で同種のベクトルとして導入するが、 多くの人はイメージを持てない。 異種のベクトルなら 〈2つのベクトルが相乗的に影響するときの「衝撃」〉と 説明ができる。 例えば、オニギリ屋でオカカを売ると 1個 10円の儲け、 シャケを売ると 1個 10円の損という設定で、 内包量のベクトル (10 円/オ, -10 円/シ) がある。 これと、前日からの売れた個数の変化の 外延量のベクトル (x オ、y シ) との 内積 (10 円/オ × x オ + (-10) 円/シ × y シ) が、 売り上げの変化という「衝撃」になる。 このとき、 2つの向きが似ていれば「衝撃」が正の方に大きく、 逆向きなら負の方に大きくなる。 向きが似ていない (なす角が 90°に近い)なら、 打ち消しあって「衝撃」が 0 に近づく。
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