2024年1月28日日曜日

奴隷誘拐 (スラド日記 2010-07-14)

 “剽窃”を意味する plagiarism の語源的な意味は、 “奴隷として売るためにする、他人の奴隷または自由人の誘拐”である。 英語やフランス語の語源辞典や単語の歴史的辞典をみるかぎり、 現在の意味に固定していくのは近代 (16C末) からのようだ。 ヨーロッパ中世では剽窃自体が問題視されていない。 匿名作品が多いし、 その中では、テンプレートとカットアンドペーストで出来ている作品も多い。

ここのところ、学期の最後あたりなのでレポートの課題を出している。 口をすっぱくして言うのは〈時間の無駄なので剽窃するな〉だ。 注意しなくても、盗用するやつはほとんどいないけど、念のため。 高校までの〈1つの正解があって、それを書けば途中経過はどうでもいい〉という価値観を 捨てられない人もときどきいるので。

〈剽窃が時間の無駄だ〉というのは、 趣旨のちがう文章をパクって繋ぎ合わせる暇があったら、 そのまま引用してしまえばいいからだ。 お作法にそって大事なところを引用して、 つなぎとして、引用の間の違いを説明したり、つっこみを入れたりすればいい。 実質的にやってるることは同じなのに、 パクれば叱られるけど、引用すれば褒めてもらえる。

文章の責任者を明確にし、 ソースを明示することで、他の人が調べ直すことができる。 これがアカデミックな世界を支えている相互信頼の基になっている。 また、他の人のアイディアを自由に使い、組み合わせることで、科学が進んでいく。 剽窃はそれを止めてしまう恥ずべき行為だ。

で、まあ、ちょびっとだけ関連ということで、 表記事の UNIX ソースコード。 僕は、他人のコードを自由に使えた方がうれしいいので、 自分が書き散らしたコードも何かフリーなライセンスで置いておく。 職業プログラマーの人の中には別の考え方もあると思う。 苦労して書いたコードなのだからクローズドにしたい人もいても当然だ。

けど、仕様書から実装すればそうなるはずのものとか、 BSD 由来で自分たちが元のコードを書いていないもの (例えば syslog) とかを 自分たちのだ金を払えというのこそ “奴隷として売るためにする、他人の奴隷または自由人の誘拐” そのもののような気がする。

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